|
|
梅雨の終わりを告げる台風が過ぎ去り 暑い真夏の季節がやってきました。
今日は京都市右京区、西京区を中心に 近畿一円で活動されています 『 リルーフまつだ 』 代表でもあり 屋根・板金職人でもある松田さんの取材のため
京北町へと続く国道162号線沿いの 京都市右京区にありますお寺に伺いました。 |
|
|
こちらのお寺は台風の被害で 屋根の中心部分である主棟(大棟)が破損し 3日前に破損した棟瓦を外し下して 今日は6段重ねの1段目を施工されているところで
松田さんは 様々な現場を掛け持ちしながら多忙な日々を過ごされるほど その確かな腕と人間性で信頼されている職人さんです。
この日の現場では松田さんと戸田さんがいらっしゃいました。 |
|
|
松田さんは15歳の時に親戚の京都の瓦屋さんで 春休みや夏休みの間 ずっとアルバイトをしていて その後、20歳のころに本格的に始められたそうです。
学生時代からすでにアルバイトとはいえ 瓦屋さんで働いていたこともあって ご自身ではそれほど大変だったという感じはなく ごく自然に当たり前のように溶け込んでいかれました。 |
|
|
屋根平面部分では桟木に瓦を引っ掛けて施工する 引掛け桟瓦葺構法が主流ですが 今回のように主棟には瓦との密着性や防水性を高める 南蛮漆喰が使用されています。
色は白と黒がありますが 施工後に見える部分のため、白色を使うことで 漆喰のように違和感のない自然な仕上がりになります。 |
|
|
松田さんが南蛮漆喰を塗り終えた箇所を 戸田さんがのし瓦を葺き替えていきます。
『 のし瓦 』 とは・・・
屋根の一番上に施す短冊状の瓦で 瓦と瓦の継ぎ目から雨水が浸入しやすいため 漆喰を塗り込みながら防水加工を施し 数段に積み上げて施工していきます。 |
|
|
戸田さんは元々、奈良県で瓦職人をはじめられ 当時 最年少で一級瓦葺技能士を取得されるほどの腕前で そのキャリアは42年にもなる百戦錬磨の職人さんです。
休憩中には戸田さんからも色々とお話しを伺いましたが 屋根はお客さんが普段 なかなか目に見えにくい部分だからこそ
職人の気持ち一つで 25年もつ瓦屋根が、50年もつようになり
ちょっと手を加えるというその気持ちの差が 将来的に大きな差となって 台風や震災の時には顕著に出てくるそうです。 |
|
|
扇風機ももはや気休め程度の猛暑・・・
僕は取材のため 僅か1時間ほどしか屋根の上にいませんでしたが 真夏の日差しが照り付ける過酷な環境下で 汗がジワジワと出てくる京都独特の蒸し暑さが 体力と集中力を奪っていくような感じでした。
夏は暑く、冬は寒い・・・ そんな大変な状況での作業が続く瓦職人の仕事ですが 松田さんも戸田さんもこの仕事は天職だと仰り
自分が携わった建物が何十年と残っていくことが 職人としての自信と誇りになっているそうです。 |
|
|
松田さんは他の職人さんがした仕事に あとから手を加えることを絶対にしないそうです。
それは施工した職人さん一人一人が プライドを持って臨んでいる仕事に対して 心から信頼しているからで
松田さんも今現在、いっしょに現場で働いているからこそ その気持ちが分かるからだと思いました。
仕事は決して一人でできるモノではなく 同じ現場で働く仲間を信頼するからこそ お客さんにも信頼していただき
安心して任せてもらえることが やりがいという責任につながるんですね。 |
|
|
夕立や炎天下の影響で 予定通り作業が進まなかったそうですが 少しずつ形になってきました。
今回使用されたのは 耐久性に優れた 『 いぶし瓦 』 です。
瓦は断熱性、遮音性が高く、結露も起こりにくく 破損個所があれば、一枚単位で交換できたり 粘土瓦はカラーベストのように再塗装の必要がなく
初期投資をして良い職人さんに施工してもらえれば 後のメンテナンス費用を抑えることができます。 |
|
|
今日は日が暮れてきた為 キリのいいところで一旦終わりです。
この十数年、洋風の家が増えたことで 瓦屋根の需要が減ってきましたが 先に説明したメリットがあり 日本の家屋にはやはり瓦が一番似合います。
そして、その屋根の上で日々己と向き合い 自分の家を施工するように 一生懸命働く職人さんたちがいます。
ええ職人.comでは お客様と職人さんを結びつけるだけでなく 職人さんと職人さんをも結びつける そんな架け橋のような存在であり続けたいと思ってます。 |
|
|
休日を挟んで二日後 再び、右京区にあるお寺に伺いました。
丁度、15時の休憩をされている所だったので 作業の進み具合などいろいろお話を聴きながら 瓦を止めるのに実際使用されている銅線を見せてもらいました。
錆びに強い素材できていて ステンレス製の針金に比べて柔らかくて曲げやすいので とても扱いやすいそうです。
これを使ってのし瓦を重ねていき主棟を完成させます。 |
|
|
この日は雲が多く 炎天下に比べて幾分マシな陽気だったため のし瓦が4段目まで積み上がってました。 |
|
|
緑に囲まれ町を一望できます。
時々 風も吹いてて気持ちがいいです。 |
|
|
この瓦と瓦の間に挟まれた木は、『 楔 (くさび) 』 と言って 棟を真っすぐに造ってしまうと 下から見た時に鬼瓦で垂れ下がって見えてしまうことから
鬼瓦の際で棟をせり上がらせ 高さを出すために一時的に置かれているモノです。
今回のようにお寺の場合は 特に棟をせり上がらせる必要があります。 |
|
|
これは見た目通り 『 鳥居 (とりい) 』 と言います。
先ほどの楔と同じく 棟を鬼瓦に向かってせり上がらせるためにこの鳥居を使って 滑らかな美しい曲線を造り上げていきます。
棟は瓦屋根で一番の魅せ場になるので みなさんもご自宅の屋根だけでなく 旅先や観光先で目にするお寺などの棟瓦をご覧になってみてください。 |
|
|
この作業は職人さんの気持ち1つで大きな差が出る繊細な箇所です。
『 技術を超越した気持ち 』 これを表現できる職人さんは残念な話、正直 多くいません。
大手ハウスメーカーに頼んだから安心というのはまやかしで どこに頼んでも実際現場で施工されるのは職人さんです。
下請けの職人さんは安い賃金で納期を迫られているのが実情で そんな環境下の職人さんが果たして良い仕事ができるでしょうか?
同じ金額を払うのなら直接 良い職人さんに頼んだ方が よっぽど納得のいく仕事をしてもらえます。
だから職人さんを選ぶ側であるお客さんの目利きが 良い職人に光を当て、成長させていくのです。 |
|
|
鬼瓦に面した のし瓦 は少しずつ切り割りしながら 適度な大きさに当てはめていきます。
|
|
|
・・・数日後、完成しました!
神社やお寺などは一般住宅とは違って 瓦屋さんなら誰でもできるモノではなく 技術はもちろんのこと、経験が大きく左右する施工になり
未熟で経験の浅い職人さんに頼んでしまうと 屋根本来の役割を果たせず致命的となります。
ご覧のように下から見上げると 左右の鬼瓦に向かって棟が少しずつせり上がっているのが分かります。
この繊細さの要求される微妙な匙加減は 技術と経験のある職人さんにしか出せない匠の技なんです。
取材撮影&文 : とくおか じゅん |
|