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今回訪れたのは岐阜県恵那市の木材・材木卸販売会社。
此処でおこなわれる材木競り市に参加する、京都市北区で大工を営む「紫野の大工さん・長尾工務店」長尾唯一郎さんの同行取材をしてまいりました。
長尾さんは数年前から此方のセリ市開催に合わせて岐阜県恵那市まで自らが脚を運んで、御自身が気に入った木材・材木を競り落とし、仕入れされているのだそうです。
朝8:00時に現地集合して長尾さんと合流。 早速出品されている材木の品定めを始めます。 広大な敷地に屋根付き倉庫が何棟も立ち並ぶ此方の会社、市場に出回る価格から2割〜3割も低価格で取引できるだけでわなく、日本中の銘木が集められて競りにかけられる事も大きな魅力であると長尾さんは云います。 |
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会社のスタッフ・加藤さんと談笑する長尾さん。 長尾さんがセリ市に初参加した当時からのお付き合いをされているそうで、今回の撮影取材にも便宜を図ってくださいました。 ※通常は写真撮影禁止となっています。
倉庫の敷地内に作られた大きな池に案内され説明をしてくださいました。 池には丸太が沈められており、これは古来から日本で行われてきた「水中乾燥」と云う乾燥方法だそう! 乾燥なのに水に浸ける!?加藤さんの説明によれば、樹液を水に溶け出させた後、水から引き上げて乾燥する事で、より良い状態の乾燥ができるのだそうです。
ただし時間が掛かり大きな敷地(丸太運搬等も考慮した)が必要との事で最近は数を減らしている乾燥方法なのだとか!
こう云う裏の現場を見学できるのも長尾さんと此処へ訪れた役得ですね。 |
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説明を聞きながら広大な倉庫内を一緒に歩いてまわっていると、長尾さんの材木の知識の豊富さに驚かされました。
私のど素人な質問に対しても、わかりやすく全て答えてくださるので、仮に自分が施主になったとしても「適材適所の木材」をちゃんと用意して、大工工事して貰えると云う信頼感があります。
事実、以前に取材させていただいた町家リフォームと店舗改装工事でも施主様とのコミュニケーションを蜜に取られながらの工事を進めていた印象が記憶に残っています。
今日競り落とされる木材が使われる現場でも同じ光景が見られるのでしょうね。 |
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さてセリ市の開始時間10:00時が迫って参りました。 長尾さんは4098番の番号付きキャップで競りに参加します。
セリ市の主催会社挨拶が終わりベルの音が会場内に鳴り響くと、いよいよセリの開始です。 大勢の買い手が取り囲むなか、せり人の声が響きわたりセリ売場に活気が溢れはじめました。
競人スタッフさんの呼びかけに各業者さんたちが手を上げて次々に落札していきます。 もっとのんびりしたテンポかと思っていたのですが、大量の商品が競りにかけられているのでそんな訳はありませんね。
テレビなどで御馴染な卸市場での競りの様子と変わらない風景で、まさに市場そのものと云った様子です。 |
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京都市北区からはるばる訪れてる紫野の大工さん・長尾工務店の長尾さん。 時間を掛けて十分に下見したので、セリ落としたい商品はある程度絞れています。
あとは競合相手がないか?希望の値段で競り落とせるか? が勝負です。
ここでの競人は朝に案内頂いた加藤さんです。
長尾さんが眼をつけたのは、分厚い桜の無垢板。 年輪が細かく節も無い綺麗で立派な木です。
さて落札なるでしょうか?
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競りは商品上代(定価)から価格が少しづつ下げられながら、競人が声を出して価格を提示していき、買い手が手あげた所で下代(取引価格・卸値)が決定して落札という具合。
なかなか買い手がつかない時は買い手側から価格を提示して、売手・買手双方で折り合いがつけば落札となります。
殆どの場合は先に手を上げた買い手の「早い物勝ち」ですが、お互いどうしても譲れない場合は、今度は買い手側が落札価格を少しずつ上げていくので、一旦下げられた価格が逆に競り上がってしまう事も。
競り市を外から見ていると、その駆け引きが面白いです。
長尾さんが落札したい無垢板、会社の偉い人も加わっての攻防! 売る側も「良質の木」とわかっているので、渋めの価格でセリが続きます。
長尾さん、卸販売会社の双方ギリギリ折り合いがつく値段で落札され、他の買い手人からも「おぉ〜!!」の声が。
競りの醍醐味を味合わせていただいた感じがします。
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とにかく敷地の広い工場&倉庫なのでセリの最中にも、欲しい木の確認と、他に見落としがないか?市場内の商品一つ一つを丁寧に見て回ります。
今回は私が同行してるので、様々な素人質問に答えていただきながらの目利きなので、お気遣いも頂きながらのセリ市参加ですから、鑑定作業の集中力維持も大変だったと思います。
私は私で数々の銘木を眼の前にして、その美しさに仕事取材である事を忘れてしまいそうに(笑)
兎に角、それほど魅力的な様々な木が所狭しと陳列されているのです。
日頃から「木が大好きで大工やってます」と云う長尾さんの「本気度」を垣間見る事になりました。 美術品の佇まいすらかもし出している銘木!それを買い付け、リフォーム等で提供する事で「木の魅力や、木の可能性」を施主様はもちろん、そこから更に広げながら再発見・再認識していただきたい。 御自身が木の魅力に気付かれたからこその、そんな思いが込められているのだと感じました。 |
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そして長尾さんを魅了し続ける木の一部がこちら。 繰り返しになりますが、此方の材木・木材市では、日本各地から良質で珍しい木、銘木が多く集められています。
広大な敷地面積の大きな倉庫には、東濃地域の製材工場から集めた東濃桧構造材や造作材を中心に、木曽桧、サワラ材や、秋田・吉野・四国・九州の各産地からの銘木木材・材木も販売されているのだそうです。 数は少なめでしたが、もちろん海外の珍しい自然木も扱っていました。
扱う木の品質も素晴らしいですが、それら銘木を企業努力によって流通システムを合理化させ、市価の二割〜三割ほどの割引価格を実現させていると云うのですから頭が下がります。
倉庫内の銘木を撮ってまわっていると、それぞれの木が異なる魅力を放っており、その美しさに引き込まれていきます。
それは「とりあえず買って部屋に置いておきたい」と思ってしまう程。 紫野の大工さん・長尾工務店の長尾さんが、わざわざ買い付けに訪れる気持ちが理解できます。 |
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一旦は競りが終わった此方の商品。 立派な無垢材なので卸価格もそれなりに高価格!で落札ありませんでしたが、どうしても諦めきれない長尾さんは、競りのグループが移動した後、再度他の競人さんに直接交渉!
小さな攻防の末、なんと落札となりました!! 長尾さんもホッと一息。
諦めずに交渉する長尾さんに一花持たせる競人の心意気もあったのでしょう。 好い木を競り落としたい長尾さん、競り人のスタッフさん、双方に粋を感じた一コマです。
この無垢板、何処の大工工事で使われるのか? 京都市でハウスリフォームや店舗改装を多く手掛ける、紫野の大工さん・長尾工務店ですから、 玄関土間の式台、キッチンカウンターテーブル等、無垢材の風合いが活かせる場所で活用される事と思います。 |
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本日は材木市場での競市に見学取材させていただけて私も貴重な体験となり、また紫野の大工さん・長尾唯一郎さんの木をこよなく愛する気持ちが伝わってまいりました。 そしてその気持ちの理由も同時に理解でき、やはり長尾さんは大工さんが天職であるのだと再認識した次第です。
今回落札した木材は
檜・はめ板 / 山桜・無垢大板 / 木曽檜・無垢大板 / 東野檜・建具板 / 欅・板 / ナラ・無垢大板 / 杉・腰板 の全7品!
今回落札した材木は云うまでも無いですが、全てが本物の木であり、大工さんが直接に見て触って競り落とし、買い付けしたので品質もバッチリ!
この後、約2週間ほどで岐阜県恵那市から京都市北区まで搬送されるので、何処かのリフォームで順次活用されていく事になります。
例えば写真の、プレカット済「檜はめ板」は節が殆ど無い物でしたから、一般ではかなり良質・高価な材となり、フローリング材としても使えるので、フローリング床リフォーム等をお考えであれば今がチャンスかも知れません。
紫野の大工さん・長尾工務店の長尾唯一郎さんの「大工仕事の質」の一端を、また一つ知る取材となりました。
※このテキストを書いてる間に、早速今回のフローリング材を使ったリフォームの発注があったとの事。銘木材でフローリングリフォームとは施主様が羨ましいですね〜。 |
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