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「紫野の大工さん 長尾工務店」長尾唯一郎さんによる、床のバリアフリー化工事を御紹介致します。 場所は京都市北区、軽自動車一台がやっと通れる程度の狭い道幅が一帯を占める、昔ながらの京町屋が軒を並べる住宅街。
工事を依頼されたお宅もそんな町屋の一つで、今回は隣の部屋との約8センチの段差を解消する為に、バリアフリー床を造る事となりました。
バリアフリー床張りが施されるのは此処の御主人の部屋ですが、御本人が既にご高齢であるのと、御家族の皆さんも不意につまづいてしまいそうになるなど普段から不安を感じていたそうです。
長尾さんは京都市の身体障害者団体連合会の住宅改造相談員もされており、安全性と快適性の両立を図った介護リフォームを多数手掛けており、施主様の悩みを解消してきた実績がある大工さんなのでこの手のも工事はお手の物!なのです。
長尾さんが下見をしに訪れた際、家猫のハルちゃんが観察中。 何が始まるのか?興味深々のようですね(ΦωΦ) |
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8センチの床かさ上げなので高さがあるぶん、新規設置する床板がたわんでしまわないように多めの45ミリ×45ミリ角材を桟木として30センチ間隔で並べ床下地に使いました。 幸い既存の床板がしっかりしていたのと、カーペットも床板に直貼りされているので、この方法がベストだということです。
桟木角材の下には高さの微調整のために、スペーサー用の薄い板(厚さ約8ミリ)も敷かれ固定されています。 全てが等間隔で置かれているのは、上から重さが加わった時に均一に受け止めさすためで、この工程の為にわざわざ墨差しでケガキがされました。 |
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私が取材に訪れた時は既に建築用JIS規格のベニヤ合板で床下地板が貼られ、既存の床は全て覆われていました。
この床下地板(捨て貼り)は12ミリの厚みがあり、これだけでも随分な剛性がありそうです! 因みに一枚の大きさは1800×910となっていて、此方の京間六畳の部屋だと無加工で六枚と、隙間に合わせて長さ幅を合わせた物が大小合わせて五枚貼られています。
これはあくまでも床の下地板なので、この上に仕上げがなされます。 今回は施主様の御要望がバリアフリーのフローリング床だったので、長尾さんのアドバイスも加え単層無垢フローリング床材をバリアフリー床張りする事となったそうです。 |
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長尾さんのアドバイスで選ばれた床材は厚さ15ミリの無垢杉板です。
杉板は柔らかいので傷がつきやすい難点があるそうですが、その柔らかさが肌触りの良さと、ほのかな温かみを生み出しているとの事。
合板(複合)フローリング材は表面に傷や汚れを防ぐラミネート処理が施されているの物もあり、その分固く、肌触りに大きな違いを生むのと、更に云うと床板その物が冷たいらしく、特に冬場には板の表面温度に大きな差がでるそうです!
今回は長さ4メートルに製材した杉板を京都市北区の現場に持込み、先ず全長を約10センチ程をカット。 最後に新規に床貼りする場所に合わせ微調整(割り付け)して部屋に敷けるようになります。
町家特有の奥に細長い間取りですが、幸いにもバリアフリー化する部屋には勝手口が隣接していたので、そこから出入りして作業ができて助かったとおっしゃられていました。 |
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長さ3.9メートルになった杉フローリング板を床下時地に並べていき、割り付け(板幅を床の幅に合わせて調整する作業)をします。 部屋の長さと殆ど変わらない床板なので扱いが少しだけ面倒なようですが、長さを分割して敷くよりも割り付けで出るロスも少なくて済みますし、その分、少しですがコストカットもできるので、施主様との打ち合わせで、この仕様に決まったようです。
本番の床貼りで綺麗に収めるには、この仮組みの段階できっちりと寸法を整えなければなりません。 まだ固定の為の釘が打たれてませんが、殆ど出来上がりと同じように杉板が並べられ、組まれていきます。 |
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リフォームの一番の目的はバリアフリ−化をすることなので、部屋の境にある敷居に張り替えするフローリングの高さを合わせ段差を解消しつつ、その合わせ目も隙間が大きくならないように微調整されていきました。 予めほんの少し(1〜2ミリ)だけ長めにしておいて、実際に床貼りされる箇所に合わせてカンナで削って調整がなされるのです!
私は素人なのでフローリング杉板を予め1〜2ミリ短くしておいて、敷居側にはピッタリ付けて床貼り施工し、反対の壁側にできた隙間は、最終仕上げの「幅木貼りで隙間を隠す」と楽ちんだなぁ!なんて考えてしまいましたが、ベテラン大工職人の長尾さんへはそんな仕事をしません。 そんな発想自体がそもそも在り得ないようです。
隙間調整の度に強い照明を当て、合わせ目にできる「陰影」で隙間の幅を見極めます。 このように一枚一枚の板を丁寧に加工しながらフローリングが仮組みされていきました。 |
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仮組みが終了するといよいよ床貼り替えの本番。 今回はボンドを用いないで釘だけを打って床張りをしていきます。
板と板の合わせ目には凹凸が刻まれていて、隣り合う板材がしっかり連結される構造の板になっているので、凸部分の出っぱりに細い釘を撃ち込んで板を固定してから、隣に凹側を差し込んで繋ぎ合わせてフローリング床になっていきます。
釘打ち機を用いて強固に打たれる釘ですが、ところどころでハンマーとポンチを用いて更にしっかり釘打ちがなされていました。
打った時に手に伝わる感覚や音で、釘の緩さを感じた時は手間でもこうした作業を行うのだそうです!
十代から大工の道に入り、腕の良い親方(名工と称される親方だそうです)に育てられたと云う長尾さんですが、それは単に「大工技術」を高めるだけでなく、「大工職人の心得」の部分が多かったのだと感じました。 |
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敷居との高さも完璧に調整されバリアフリーリフォームが終盤に差し掛かり、壁に沿った部分の釘打ちが進められていきます。 壁際では床面に直接に釘が打たれていきますが、幅木が施工されるので、その幅木が載って隠れるように配慮されています。
床貼り施工に使っているのは極細い針釘なので目立ちませんが、できるだけ仕上げが綺麗になるようにしているのと、部屋の中を移動する毎に体重が掛かる床ですから、その度に重さで板がたわむので「数十年」もすると釘の頭が出てきてしまうかも知れません。 その時に怪我をしては大変ですから上から幅木を被せてしまうのは理にかなったことなのです。
京間六畳に杉板が張られ美しく輝いていますね。 |
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床バリアフリー工事の作業は幅木の施工へ。 今回の幅木は桧板を39ミリ幅に切り出して、壁に合わせて長さ調節された板材が選ばれました。 ここでもカンナを用いて微調整された板を壁に貼り付けていきます。
部屋の角にピッタリと合わせられて張られていく幅木の仕上がりも上々です。 今回のリフォームでは施主様も木に拘わっておられたので、木が大好きな紫野の大工さん・長尾工務店を選ばれたのです。 |
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幅木取り付けが終わり町家バリアフリー床も終了と思いきや、最後の最後に「節の穴埋め」を始められました。 これは粉状の木を用いた長尾さん独自の仕上げ処理です。 木を加工する際に必ず出る、木くづの特に目が細かいものだけを集めておき、こういった施工の時に用いるのだそうです。
今回は国産杉板を床貼りに用いましたが予算の関係で、節が多めの材になってしまいました。
私個人的にはこの節に「如何にも本物の木」を感じて好いのですが、長尾さんいわく床に施工されているので大きな節の凹みで怪我をしてしまう可能性もあり得るので、そのリスクを軽減する為にも表面を平らにしておきたいとの思いがあったのだそう。
しかしこの作業、写真を御覧いただくと結構な手間なのがお分かりだと思います。 節に細かな木くずを指で詰めていき、特殊な接着剤で固めた後、のみで削って表面を整える事で完了しました。 床を長尾さん自身で撫でて感触を確かめながら、気になる箇所(節)にこの加工を施していかれました!
かなり面倒なフローリング表面加工ですが「本物の木であるが故の気遣い」も心得ている大工職人さんならではの場面でした。
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京都市北区の古い町屋が軒を連ねる住宅街で、町家リフォーム「部屋の段差解消・フローリング床張り」を取材させていただき、町家で暮らす良さと、古い町家だからこその不便な部分も知りました。
町家で長年暮らしておられる施主様ですが、御自身の年齢に合わせて使い勝手を良くしていく事で、不意の怪我の発生防止を期待されておられ、特に床のバリアフリー化はその効果が大きいので予てから町家リフォームをしたかったのだそうです。
床のバリアフリー化をする際に木に拘った事で、木の風合いを大切にしたリフォームをする「紫野の大工さん・長尾工務店」に巡りあい、今回の床の段差解消リフォームを御意向に沿った形で仕上げることができました。
「紫野の大工さん・長尾工務店」長尾唯一郎さんは、京都で介護者住宅や高齢者住宅を御希望される施主様にリフォーム相談などをする、住宅改造相談員として身体障害者連合会にも所属されており、様々なケースで暮らし難さの問題を解決した経験が、施主様の暮らしやすさを考えたリフォームで、家のお悩みを解決してくれます。
それは例えば、手すり一つの取り付けや、棚一つの取り換え設置から!
京都市でバリアフリー床リフォームはもちろん、介護住宅へのリフォームをお考えであれば「紫野の大工さん・長尾工務店」の長尾唯一郎さんに御相談ください。 |
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