大工　浦烈晴の施工例

以前の取材で変木・無垢材の魅力を熱く語ってくださった
大阪府堺市の大工職人浦さんが

『近々、耐震補強を含めた増改築といった
リノベーション工事の依頼があります』とご連絡頂き
大阪府高槻市にありますお宅に伺いました。

到着すると丁度家主さんとお話をされているところで
間取りが大きく変わることもあって
どのようなカタチになるのか？
今後の作業の進め方も含めてご説明されているようでした。

こちらの家主さんは
ええ職人.OCMから浦さんへのご依頼だったこともあって
今回の取材を快く了承していただけました。

図面を見せていただきながら
浦さんに今回の施工内容を教えてもらいました。

今回は２階建ての木造住宅の
１階部分、１５坪の増改築工事になっていて

玄関やトイレ、浴室などの位置はそのままに
リビングと和室の位置が入れ替わること
今現在のガレージ部分にまで増築をして（広縁と記された箇所）
部屋のスペースを広く取るということだそうです。

このように職人さんに直接依頼することで
いろいろなことを気軽に相談でき
浦さんの様に実績も経験ある職人さんによって
適切な答えが導き出された、安心・安全な家造りができます。

みなさんにとって良い家ってなんですか？

家は完成してしまうと
形や色、外壁やクロス、フローリングなど
パッと見の外面ばかりに目を奪われ
どのような構造、土台になってるかまでは見ることができません。

お家は洋服とは違って取っ替え引っ替えできるモノではなく
何十年と住み続けるモノですから
まず大切なのは安全な家であるかどうか？

こちらは築４５年ほどになるため
解体作業のあと、浦さんは家の構造を見極め
このように柱を金具で留め耐震補強を徹底的にされました。

丁度、浦さんが指差す先にある
まだ色の明るい柱や梁などが新たに取り付けられた木材で
弱っている部分には隣りに新たに足すなど
必要な補強がなされているのがよく分かります。

以前の取材でもお伝えしたように
今は明るい色の無垢材も
時間の経過とともに飴色の様に味わい深く変わっていきます。

奥に何本も斜めに張り巡らされた木材は
耐震用として一時的に取り付けられているモノであり
実際には完成までに数ヶ月かかることから
施工中の安全対策もしっかりと意識されています。

こちらは元々あった柱に新しく梁が設置されていますが
古い木材は年数と共に絞られる（細く）なり
新しい木材をキッチリと合わせることが難しいため
このように絶妙に計算された木材を合わせられています。

『キッチリと木を合わせれば百年もちます』と
昔ながらの木造建築にも精通した知識と経験と技術を持つ
浦さんだからこそ、その言葉に説得力がありました。

もし今後、お家を建てたり改築予定の方は
見た目の完成ばかりに気を取られないで
まずどのような構造になっているか？

しっかりとご自身の目で現場で直接見て
職人さんとコミュニケーションを取ることをお勧めしますし
浦さんであれば安心して気軽にお話ができます。

昨今のプレカット主体の現場しか経験のない大工さんだと
家の構造がまったく理解できてないことから対応力がなく
ただ言われたままの材料を使って施工するだけに終わります。

しかし、浦さんは日々の作業の中で
常に何かを掴もうと自分と向き合い続けてきたと言います。

大工道を積み重ねること４０年。

今では同業者が驚くような様々な技を身に着け
その探求心は今も変わることなく燃え続け

引き出しが増えることで自分にとっても
お客さんにとっても納得できる最良の道が見えてきます。

現場の職人さんはこのように
数ヶ月間完成を目指し黙々と作業を進めていき
その仕事をする音だけが響いています。

誰かがじっと見ているわけでもない空間だからこそ
時には少し気が抜けてしまうこともありそうですが

浦さんは
『お家のご先祖様がちゃんとやってるか見ているはずだから』と
常に身も心も引き締まった状態で

気持ちを込めて良い仕事をすれば
少しずつ結果となって表れてくると信じて作業されています。

明日の日曜日には行きつけの吉野にある材木屋さんへと
休みの日にも関わらず行かれるそうで

いつもこの仕事のことが頭から離れず
『こういうことをしていることが大好きで
（吉野へ）木を観に行くときは恋人に会いに行くような感じ』
と満面の笑みで嬉しそうに仰ってました。

こちらのお家は
完成までにもう一度取材させて頂くことになっていて
次は変木を使って施工されている模様をお伝えする予定です。

丁度、今回でライティング５０記事目となり
僕にとっても思い出深い取材となりました。

取材撮影＆文：とくおかじゅん