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玄関に入ってすぐに 目に飛び込んできた不思議なカタチをした木。
今日は大阪府堺市を拠点に 大阪をメインに活動されている 『 浦工務店 』 の大工職人 浦さんによる 内装リフォーム工事の完成現場に伺いました。
浦さんは単なる大工職人ではなく 『 新築からリフォームと住宅のことなら総合的に対応できます 』 と 日本伝統の木造建築で しっかりとした家造りを意識した施工をされている職人さんです。 |
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約束の時間に到着すると 丁度、家主さんとお話をされていて ごあいさつをして早速 ご説明をしていただきました。
写真でもお分かりの通り 浦さんは奈良県吉野の変木(銘木)を使った大工さんとして これまで幾つもの施工をされてきた実績があり
職人さんも一人の人間であって 昨今の住宅と同じような造り方では 自分が施工した証が残せないことから
一般的には茶室や飾り柱として使用される変木を取り入れ お客様のご要望に沿った家造りをされています。 |
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玄関入ってすぐの上がり框 ( かまち ) 。
ここにまず変木が使用されていて 微妙に波打っているのが自然にできた形です。
一般的なプレカットされた木材だと 20年ほどで剥がれてきますが 自然木だと半世紀以上の耐久性があるそうです。
浦さんは高校を卒業後、当時 機械体操の選手として 指導者にもなれるほどの実績があったそうですが 親の勧めと、将来性を考え地元の工務店に入り 本格的な大工さんとしてスタートされました。 |
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この世に一つしかない変木を使った階段の手すり。
上が大人用で下が子供用と 自然が生み出した木が見事に家の一部なっていて 階段の傾斜も安全面を考え緩やかにされたそうです。
昔は当然のごとく 手取り足取り教えてもらえるなんてことはなく 先輩の仕事を見て時間を作っては 自分で端材などを使って試行錯誤する毎日。
分厚い参考書なども読み漁ってとにかく覚えることに必死で どれだけ厳しい環境下にいても 浦さんの中で辞めるという選択肢は全くなかったそうで
ただ、一人前の大工になるという想いで 4年間 無我夢中になって歩んで行かれたそうです。 |
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こちらは二階にありますキッチンです。
キレイに施工し、見慣れた光景の中にズッシリと構える存在感に 入った瞬間 思わず目が行きます。
このカウンターの横には 家族でご飯を食べるための台所机を置く予定に合わせて 小物が置けるよう、4つの区切りが施されています。
先ほど紹介した玄関の上がり框にしろ 階段の手すりにこちらのカウンターと 今でこそ変木(銘木)はまだ色が明るい状態ですが
これから時間の経過とともに飴色のように変わっていき また一味違った雰囲気になっていくそうです。 |
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こちらは部屋の明かりを灯す電灯が設置されるスペース。
今回は部屋の構造上、六角形がベストだと決められましたが 浦さんはその家の状態を見て 多角形にも、もっと奥行きのあるようにも いくらでもバリエーションが増やせると仰います。
実際、この場合の施工である木の角度は 三角関数を使って出されるそうですが
そういった知識も技術も誰に教わるわけではなく 浦さん自身、日々の現場やプライベートの時間も削って その知識と技術を身に着けていったそうで
当時、大工職人になるという覚悟と意地がお話の中から ジワジワと伝わってくるようでした。 |
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こちらは同じ二階にありますスペースに このような台を造られました。
元々は何もないフローリングだったそうですが 畳を四枚敷き、コーナー部に変木が使用されています。
人がいた方が大きさが分かりやすいかと思いまして 浦さんに入って頂きました。
こんな感じです。
お子さんにとってはちょっとした遊び場になり 二階に入った瞬間、先ほどのキッチンと 奥にありますこちらのスペースが 現代風の建築の中にアクセントとなって存在してます。 |
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台の下にはこのような収納スペースが。
変木は自然が生み出した偶然の産物。 似たようなモノはあっても全く同じものは存在しません。
それを浦さんは木を見た瞬間にどのように部分に使えるか 頭の中で瞬間的に閃くそうですが それも40年以上のキャリアがあってこその成し得る業で
浦さんは地元 長崎で4年間修行した後 大阪で建売住宅をメインに施工していき 同じように繰り返されていく作業に 『 自分が携わった証を残せる大工になりたい 』 という願望が湧き
独立して2年後に吉野の変木と運命的な出会いをし それを使った木造建築を念頭に しっかりとした和風の家造りをしようと継続。 |
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若かりし頃の厳しい環境を乗り越えたからこそ 人の想いや願いが敏感に察知でき それがひとつひとつの仕事に表れるようになったと浦さん。
結露防止にと二重のガラス窓になった障子部分に 一般的には余分なスペースを作らない枠組にも 変木の良さを活かした見た目にも配慮した造りに仕上げられました。
下請けで建売住宅を施工する中で 自分らしさを出せないことへのもどかしさは 業界は違えどカメラマンである僕も同じで
5年、10年後を見据えて 『 自分らしさを追求する姿勢 』 ある意味 禅問答のような日々を続けることの大切さを お話を伺っていてとても共感しました。 |
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三階部分にはお客様のご要望によりクローゼットを。
もう一部屋は元々あった天井の板を外して梁を見せることで 部屋の圧迫感を緩和させ広く感じるようにリフォーム。 |
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お風呂場は入口スペースに角度をつけることで 以前よりも少し広く取れるようにして 一日の疲れを少しでもゆったり癒せる空間作りを実現。
こちらの家主様は前から浦さんとはお知り合いで 間近で浦さんの仕事ぶりを見ていたことから リフォームするなら浦さんにと思ってらっしゃったそうです。
自分たちにとって大切な家を 何の迷いもなくそうやって任せてもらえるには 確かな技術や経験だけでなく
当然、人間性も必要性になってくるため 浦さんが40年積み重ねてきたキャリアが物語っています。 |
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このように気付かれないような そんな細かな部分にも決して妥協しない浦さんですが
決して目先の結果だけに捉われてなく ずっと残っていく家と同様 常に未来を見据えて仕事に向き合われているそうです。
自分が信じたことを 出来る限りのことをやっていくことで
『 信 頼 』 という目には見えない大切なモノが 枝分かれして少しずつ実ってきていますと
ひとつひとつの仕事と 誠実に向き合っていくことの大切さを実感されています。
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オンリーワンな大工職人を目指して。
浦さんに自然が生み出した変木(銘木)の魅力を尋ねると・・・
同じ木は一つとしてないフルオーダーメイド。 家にも体にも優しい檜は耐水力があって建築材としては最高級。 でも、一般的な建築材とそれほど値段差がない・・・と。
『 自分の想い通りに変木がハマったときは快感にも似た喜び 』 と
何より、施工する職人さんが そんな気持ちで見て選んで使っていると知ると 材木屋さんはもちろん 家の一部となった木々たちも喜んでるんじゃないでしょうか ♪
取材撮影&文 : とくおか じゅん |
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