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前ページからの続き
型枠の上端いっぱいまで生コンクリート投入&バイブレーター処理が終わると、最後にコテで生コンクリートの表面を慣らしていきます。
鉄筋が上に伸びていることからも分かるように、この型枠分の生コンクリートが固化した後、今までの一連の作業を繰り返して再び生コンクリートを打設しながらコンクリート壁を積み上げて行く工法です。
なので、その接合面を慣らしておくのがこの作業の目的です。
地味ですがこれも大切な一手間の作業なのです。 |
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前回の取材から暫くして再び建設中の「ますと庵」へとやってまいりました。
大工さん達の工事も随分と進んでいますが、森本さんが手掛ける玄関アプローチ壁もかなり形になっていました。
型枠四段分の高さは2.5メートル程で、奥行きはなんと建物の内部にまで!
前回までの取材時までは、てっきり屋外の壁だと思い込んでたのでこれには驚きました。
そして生コンクリート打ちは、いよいよ残す所、一回分となっていました。
この日は最後の生コンクリート打ちの為に、数日前に打設した型枠の解体を行ないます。
解体の際は型枠に留めてあるセパレータのビスを外していきます。
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全てのセパレータのビスが外されると、バリッと捲るようにして型枠が剥がされました。
型枠の上部に固定されているセパレータは、そのまま次の上段の型枠を固定する為の位置決めも担うので、変形しないように力加減に注意しながらの作業です。
この段は打たれたコンクリートが半分の量に!壁の高さに変化を付ける為に途中で仕様変更がされました。
御自身の会社の営業所と云うことで、このアプローチ壁を作っている途中に浮かんでくる様々なアイディアを、自由に形にする事を楽しまれている様子が伺えます。
このあたりの柔軟な工事展開は、休日には絵画を描いている森本さんらしさの現れた場面だと感じました。 ※その絵画の最新作は、今年夏の美術作品展「湖国展」で特別賞を受賞されたとの事です!
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この写真では壁の波型模様の様子がよくわかって頂けると思いますが、もう一つ、コンクリート面の所々に大きなうねりが在るのもお分かりになりますでしょうか?
柔らかい樹脂波板がコンクリートの圧力で膨らんで、そのまま固化した形です。
先に述べたように「積極的に偶然性を期待して作った型枠」の効果が現れている場面ですね!
「職人」=「全てが計算ずく」=「神業の持ち主」ではなく、計算外の偶発的な出来事を発見し、それを楽しみ経験にして活かしていくのが職人である!と述べる、森本さんの個性が形になっていると云えます。
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前回の取材で最終と思っていたのですが、森本さんから御連絡を頂いたので再び現場へ行ってまいりました。
なんとせっかく綺麗に仕上がった波目模様の凸部分がチッパーと呼ばれる工事機具で削り取られていました!
壁が上に積み上げられ形になっていくにつれ、表面に浮き出た波板の存在が目立ちすぎると感じていたそうですが、生コンクリート打設を全て終えてから壁の全体像を見た後に、やはり波目模様を削って整える作業を加える事にしたそうです。
機械を使っているとは云え手作業で削られるので形は均一にはなりませんが、あえて不均一な造形を狙っています。
この作業では表面部分に近い骨材も一緒に砕き削られるので、地層のような?年輪のような?複雑な模様が浮かび上がってきました。
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コンクリートが積重ね上げられた段の目地部分の全てに、セパレータ10本程度が突き出したまま埋まってます。
なので最終仕上げとして、この壁から突き出ているセパレータをディスクサンダーで削り落とさなければなりません。
このままでは美観を損ねるのは勿論ですが、鋭利な金属の切断面が壁から突き出しているのは危険なのです。
激しく火花を散らしながら処理される様子から、鋼鉄製のセパレータが固い素材であるのがお分かり頂けるでしょうか? 当然ながら壁面の表裏に突き出たセパレータの全てを処理されていました。 |
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自作の化粧型枠で形どられた波型模様が削り取られた様子と、照明用の配線が通された照明スペース(四角い部分)の形がよくわかりますね。
森本さんがコンクリートにも無垢材の風合いを見いだしたい!と以前に云われていたのを、色合いや細部の形が微妙に異なる仕上がりのコンクリートを見て思い出しました。
色味に関しては、意図的に色粉の配合量を変えてあるのは勿論、積極的に偶然性を期待してカラ練りやバイブレーター処理の掛け方を変えた事による結果だそうです。
そんなふうに手間を掛けた分、個性的な仕上がりのアプローチ壁が完成しました。
御自身を「社長と云う肩書を持った現場職人の一人」と云い、常に現場仕事をされている森本さんは、建築基礎工事のベテラン職人である一方で、美術作家の顔も持ち、その両方の良いとこ取りな人と云うのが、私が今回の取材を通して感じた印象です。
コンクリートの意味はラテン語で具体化する・凝固・固体化だそうですが、森本さんにとってのコンクリートはまさにその意味通り、自分の考えや経験を具体化すると云う存在のようです。
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住宅基礎工事のような図面に記された規定寸法を正確に形にし、設計基準強度を確保して規格どおりの工事をするのは、基礎工事のプロ集団としては当たり前の事だと森本さんは云います。(その事は、幾つもの大手住宅建設会社から住宅基礎工事を受注してこられている経歴が物語っています)
それと同時に個人の御客様から依頼されるコンクリート工事、例えば家を囲むコンクリート塀の新造・改造や、庭やガレージスペースを作り変える工事(花壇のグリーンスペースやビオトープ等の小さな水辺)のように、「お客様から出来上がりのイメージで伝えられる、図面の無い、いわば規格外の工事」に対して、その「お客様の思い描く形をどれだけ具現化して御要望に答えられるか?」を、常に考え追求してきた経験が今回の型枠造りにも活かされていると云えます。
個人で建築基礎工事を直接に依頼する事はまれでしょうが、例えば今回のような外構工事と呼ばれる類の工事にも柔軟に対応されているのが「有限会社TEAM MUST LTD」です。
お客様自身の自由な発想をぶつければ、その発想をより魅力的に具現化してくれるのが森本さんと「有限会社TEAM MUST LTD」のスタッフさん達だと感じました。 |
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