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天生元年(1573年)に建てられた
京都市伏見区久我本町にある満願寺
450年の歴史を持つそのお寺には
建物の困りごとなら気軽に相談できる
地元の大工さんがいました。
それが、優建築工房/谷口貴代孝さん
先代である大工職人の父親が
福知山から久我本町に来て半世紀…
この地で生まれ育って自身も大工となり
父親が築き上げてきたモノを受け継いだ今も
地元の人から頼りにされる職人さんとして
日々様々な大工仕事をされています。
天生元年(1573年)に建てられた
京都市伏見区久我本町にある満願寺
450年の歴史を持つそのお寺には
建物の困りごとなら気軽に相談できる
地元の大工さんがいました。
それが、優建築工房/谷口貴代孝さん
先代である大工職人の父親が
福知山から久我本町に来て半世紀…
この地で生まれ育って自身も大工となり
父親が築き上げてきたモノを受け継いだ今も
地元の人から頼りにされる職人さんとして
日々様々な大工仕事をされています。
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お父さんが腕利きの職人という事もあって
建築業界が身近にあった谷口さんは
幼少期から物作りが好きでお手伝いもするなど
小学生の時には既に将来 大工になることを決心
16歳から父親の下で3年働くも
親子という関係上、当時は甘えもあって
職人としてのやる気が弱かったそうですが
奥様と付き合っていたのもこの頃で
結婚という人生の節目を機に
もっと本気でやらなくてはという気持ちが湧き
本物の大工職人になるために
向日町にある園田工務店で10年勤め…
そこでは松の木で有名な善峯寺といった
お寺の工事をメインに手掛けていたこともあって
単なる大工ではなく
宮大工としての技術や経験が培われたそうです。
お父さんが腕利きの職人という事もあって
建築業界が身近にあった谷口さんは
幼少期から物作りが好きでお手伝いもするなど
小学生の時には既に将来 大工になることを決心
16歳から父親の下で3年働くも
親子という関係上、当時は甘えもあって
職人としてのやる気が弱かったそうですが
奥様と付き合っていたのもこの頃で
結婚という人生の節目を機に
もっと本気でやらなくてはという気持ちが湧き
本物の大工職人になるために
向日町にある園田工務店で10年勤め…
そこでは松の木で有名な善峯寺といった
お寺の工事をメインに手掛けていたこともあって
単なる大工ではなく
宮大工としての技術や経験が培われたそうです。
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ご覧いただいてる満願寺の本堂は
平成13年に増築
その裏にも新しく住居を建てられ
もちろん全て谷口さんの手によるもの…
お寺を施工する場合
一般的な大工さんが金具やビスを使って施工する
在来工法では全く通用せず
そういったモノを一切使用しない
墨付け刻みされた木材を加工し
木と木を組み合わせた仕口のみで建てるという
軸組(木組み)のスキルが求められ
谷口さんはその技術を現場の中で
やったことのないモノをアイデアとして出し
自分なりにいろいろ試しながら覚えていったことで
応用が利くようになった(引き出しが増えた)そうです。
ご覧いただいてる満願寺の本堂は
平成13年に増築
その裏にも新しく住居を建てられ
もちろん全て谷口さんの手によるもの…
お寺を施工する場合
一般的な大工さんが金具やビスを使って施工する
在来工法では全く通用せず
そういったモノを一切使用しない
墨付け刻みされた木材を加工し
木と木を組み合わせた仕口のみで建てるという
軸組(木組み)のスキルが求められ
谷口さんはその技術を現場の中で
やったことのないモノをアイデアとして出し
自分なりにいろいろ試しながら覚えていったことで
応用が利くようになった(引き出しが増えた)そうです。
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定刻になると知らせる音が久我本町に鳴り響く
鉄塔の塗装も谷口さんが自らされ
父親がなんでもする職人だったおかげ…と
今では大工仕事だけでなく塗装から屋根板金
住宅基礎から電気工事まで一人で何役もされるなど
この仕事が「天職」だと仰る背景には
35年経った今でもふとした発見から
一本の木を切るのも楽しいという想いがあり
お寺の手すりも蒲鉾型にするなど
ついひと手間加えたくなるという性分は
少年の頃のような遊び心と好奇心を今も変わらず
抱き続けてらっしゃるからだと思いました。
定刻になると知らせる音が久我本町に鳴り響く
鉄塔の塗装も谷口さんが自らされ
父親がなんでもする職人だったおかげ…と
今では大工仕事だけでなく塗装から屋根板金
住宅基礎から電気工事まで一人で何役もされるなど
この仕事が「天職」だと仰る背景には
35年経った今でもふとした発見から
一本の木を切るのも楽しいという想いがあり
お寺の手すりも蒲鉾型にするなど
ついひと手間加えたくなるという性分は
少年の頃のような遊び心と好奇心を今も変わらず
抱き続けてらっしゃるからだと思いました。
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そして今回は
お寺の裏にある木造の塀が老朽化したことで
満願寺の住職さんから相談を受け
補修工事をされることになりました。
時は冬の大寒波が日本列島を襲った年末…
朝から強風が吹く中
谷口さんは様子を見に来られた住職さんと
作業の流れなど簡単な打ち合わせ…
その会話からは時折 笑いも起こるなど
何気ない世間話の中から
これまで築いてきた信頼関係の深さが伺えます。
そして今回は
お寺の裏にある木造の塀が老朽化したことで
満願寺の住職さんから相談を受け
補修工事をされることになりました。
時は冬の大寒波が日本列島を襲った年末…
朝から強風が吹く中
谷口さんは様子を見に来られた住職さんと
作業の流れなど簡単な打ち合わせ…
その会話からは時折 笑いも起こるなど
何気ない世間話の中から
これまで築いてきた信頼関係の深さが伺えます。
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久我本町で生まれ育ち職人となった谷口さんは
結婚後もずっとこの町に住んで活動され
父親の代から生まれた交友関係は
満願寺だけでなく、近隣のお寺だけで4つ…
お父さんが引退したから今度は息子さんに…
「そんな流れでした」とお話だけ聴いていると
とても簡単なように感じられますが
先代と比較されることもあれば
今までのように上手く事が運ばないかもしれない
二代目ならではの難しさがある中
良好な関係が変わることなく続いているのは
仕事に対する真面目な姿勢はもちろんのこと
その裏で様々な努力があったことが想像できます。
久我本町で生まれ育ち職人となった谷口さんは
結婚後もずっとこの町に住んで活動され
父親の代から生まれた交友関係は
満願寺だけでなく、近隣のお寺だけで4つ…
お父さんが引退したから今度は息子さんに…
「そんな流れでした」とお話だけ聴いていると
とても簡単なように感じられますが
先代と比較されることもあれば
今までのように上手く事が運ばないかもしれない
二代目ならではの難しさがある中
良好な関係が変わることなく続いているのは
仕事に対する真面目な姿勢はもちろんのこと
その裏で様々な努力があったことが想像できます。
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「家を建てること」は
職人にとって花形仕事に見えますが
大工仕事はそれだけにとどまらず
年数と共に必ず劣化していく家屋を
時には造り直し、時には修繕や補修する…
家は建てたらそれで終わりでなく
大工さんとお客さんにとっては
そこからが新たなスタート…
ただ稼ぐことだけを意識した職人…
値段だけで選ぶ客…
そんな希薄な関係では谷口さんのような
人に寄り添った深い仕事は絶対にできません。
「家を建てること」は
職人にとって花形仕事に見えますが
大工仕事はそれだけにとどまらず
年数と共に必ず劣化していく家屋を
時には造り直し、時には修繕や補修する…
家は建てたらそれで終わりでなく
大工さんとお客さんにとっては
そこからが新たなスタート…
ただ稼ぐことだけを意識した職人…
値段だけで選ぶ客…
そんな希薄な関係では谷口さんのような
人に寄り添った深い仕事は絶対にできません。
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電ノコやインパクトで加工されたヒノキは
ノミやカンナを使って更に細かく正確に削られ
そして出来上がった仕口は
金づちで何度も叩かないと入らないほど硬く
当然 釘など必要ありません。
谷口さんによると
釘を打つことは補強のように見えて
実は木材に亀裂が入っているため
普段から可能な限り釘を使用しない
頑丈な仕口を造るようにしているそうで
その裏打ちされた大工スキルは
在来工法が全く通用しない環境に身を置いた中で
積み重ねた宮大工の経験があってこそ…
電ノコやインパクトで加工されたヒノキは
ノミやカンナを使って更に細かく正確に削られ
そして出来上がった仕口は
金づちで何度も叩かないと入らないほど硬く
当然 釘など必要ありません。
谷口さんによると
釘を打つことは補強のように見えて
実は木材に亀裂が入っているため
普段から可能な限り釘を使用しない
頑丈な仕口を造るようにしているそうで
その裏打ちされた大工スキルは
在来工法が全く通用しない環境に身を置いた中で
積み重ねた宮大工の経験があってこそ…
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バーナーを使って表面を焼くことで
防虫・防腐効果が生まれます。
現代では当たり前とされるこのひと手間も
大昔に先人の誰かが
そのことを発見したからだと考えると
技というモノはその時代を生きてきた人たちが
常に自分と向き合い昨日より今日、今日より明日と
高みを目指す強い向上心から生み出され
次の世代が継承し、また新しい何かを創っていく…
これまで取材してきた良い職人さんたち同様
谷口さんも話されていた「職人仕事は一生勉強」
その言葉の本当の意味ってそういうことでは?と
なんとなく思ってしまいました。
バーナーを使って表面を焼くことで
防虫・防腐効果が生まれます。
現代では当たり前とされるこのひと手間も
大昔に先人の誰かが
そのことを発見したからだと考えると
技というモノはその時代を生きてきた人たちが
常に自分と向き合い昨日より今日、今日より明日と
高みを目指す強い向上心から生み出され
次の世代が継承し、また新しい何かを創っていく…
これまで取材してきた良い職人さんたち同様
谷口さんも話されていた「職人仕事は一生勉強」
その言葉の本当の意味ってそういうことでは?と
なんとなく思ってしまいました。
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こうやって出来上がってしまえば
正直 第三者にそこまでのことは分かりません。
でも大事なのは
何を作ったかではなく、誰が作ったか…
例え誰が作っても同じような
何の変哲もないただの塀に見えたとしても
半世紀経った今でも良好な関係で
気軽に相談できる満願寺の住職さん
その期待に応えることができる谷口さん
そう考えると、これは谷口さんにしかできない
仕事であることが全てを物語っています。
こうやって出来上がってしまえば
正直 第三者にそこまでのことは分かりません。
でも大事なのは
何を作ったかではなく、誰が作ったか…
例え誰が作っても同じような
何の変哲もないただの塀に見えたとしても
半世紀経った今でも良好な関係で
気軽に相談できる満願寺の住職さん
その期待に応えることができる谷口さん
そう考えると、これは谷口さんにしかできない
仕事であることが全てを物語っています。
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この日は夜にも店舗工事があるそうで
「生涯職人」としていつまでも
現場で大工仕事をしていたいという谷口さんは
どんなに忙しくても
頂いた依頼は人任せにできず
最後は自らちゃんと確認してしまうという…
責任感も兼ね備えた大工さんであることが
お話を伺っていてとても強く感じられました。
「優(ゆう)」建築工房
家族のイニシャルが入ったそのマークは
谷口さんが自らデザインされたモノで
優しい子に育ってほしいという…
父親としての願いが込められた
「優」という一字を使ってそれぞれ付けられた
娘さんたちの名前が由来となっています。
取材撮影&文 :
とくおか じゅん
この日は夜にも店舗工事があるそうで
「生涯職人」としていつまでも
現場で大工仕事をしていたいという谷口さんは
どんなに忙しくても
頂いた依頼は人任せにできず
最後は自らちゃんと確認してしまうという…
責任感も兼ね備えた大工さんであることが
お話を伺っていてとても強く感じられました。
「優(ゆう)」建築工房
家族のイニシャルが入ったそのマークは
谷口さんが自らデザインされたモノで
優しい子に育ってほしいという…
父親としての願いが込められた
「優」という一字を使ってそれぞれ付けられた
娘さんたちの名前が由来となっています。
取材撮影&文 :
とくおか じゅん