|
|
今回は錠前技師の川井さんによるカギの新規取り付け・修理・交換施工を紹介させて戴きます。
場所は東山区に在る個人様の御宅ですが、なんと昭和3年(1928年)築!!のモダンな洋風住宅で、人気アニメ映画の主人公が暮らすような、その物語の舞台になるような素晴らしい佇まいで、当然の事ながら、扉戸もカギも建築当時から84年間も使い込まれた年期の入った物です。
とても古い型式のカギなので、普通のカギ屋さんでは修理対応ができないため、錠前技師の川井さんの出番となったわけです。 |
|
|
カギの故障は本体が壊れるだけと思われがちですが、壊れる原因が他に在る場合もあるとの事。
なのでカギの修理・取り付け前に、先ずは扉と扉枠を取り付けている金具のズレや歪み等、不具合が無いかを入念にチェックされます。
此方では受座側の扉が長年閉まりっぱなしだった為か若干傾いておりましたが、蝶番のネジの増し締め等、川井さんが調整を行なって適正な状態に直されました。
そして今回、新規取り付けを行うカギですが、施錠性能はもちろん、建物全体の様式や周囲の景観までもを考慮して選ばれたとの事!(ちみに写真は今回使用された補助カギと同じ種類の物)
※アンチックで頼りなさげに思われるかも知れませんが、このカギは補助カギとして使用するので充分な防犯性能を有しています。 |
|
|
84年も以前の古い鍵ですから、最初に訪れた当日は部品が有るわけもなく当然修理が不可能だったそうです。
その代わりに仮のカギとして取り付けた物(上の写真と同じカギ)が、この日から補助カギとして機能するように再施工されます。
正確で丁寧な仕事なのはもちろんですが、常に美観も考慮したカギの取り付けを心掛けている川井さんですから、たとえ補助カギといえども仕上がり後の扉戸の印象が大きく変わらないように、労を惜しまずに一つ一つの作業を進めていきます。
※写真はカギケースが入るようにノミで加工している所です。 |
|
|
ネジ穴用の穴開け作業も慎重に慎重に!
この御宅では観音開き式の扉戸なので、カギ本体と受け座(カギが引っ掛かる側)を新規に取り付ける為には、扉の両側に新設の穴開け加工が必要です。
センタポンチでアタリを付け、ドリルで穴を開けた後、ノミ・ハンマー・ヤスリ等を駆使して手作業で丁寧に扉戸への加工をされていました。
これらはもちろんミリ単位で寸法を計り、調整しながらの作業です。
上でも説明致しましたが、これらは補助カギの新規取り付け施工としては随分と手間暇が掛かる作業だと思いました。 |
|
|
こちらは完全に取り外されたカギです。 壊れてしまった内部は泥蜂が小さな巣をいくつも作っていました。
当然、僕が見て判るものではないですが、ラッチ部分の不具合が発生しているらしく、ソレを取り替えるにしても既に当時の部品は入手不可能! なのでケースを利用しつつカギ本体の中身を現代の錠本体と入れ替えます。
更にドアノブもネジ切りがナメてしまって脱落寸前なので交換することにしました。
昭和3年から84年間のドアの開け閉め・施錠は何百万回でしょうか?仮に一人が一日一回出入りすると、単純計算で扉は61320回開閉されます!!それ✕家族の人数で施錠も繰り返される訳です!!!
84年間もの年月を家を守り歴史を共にし、これだけ長持ちしたドアノブ・カギ達には、川井さんから労いの言葉が掛けられていました。 |
|
|
こちらはメインになるカギの施工の様子です。
ドアノブとカギ穴の距離を採寸して中に装着するカギ本体との相性を見極めます。 扉との外観の相性を考慮して出来るだけ当時の姿を残す狙いがある為イロイロと模索をされながら作業されていました。
何度も謂いますが、このような場合の一番簡単なカギの新規取り付け方法は、扉との外観の相性は犠牲にして現代デザインのカギを、簡単に短時間で設置してしまうことです。
しかし、ソレを選ばない川井さんに真の錠職人の心意気を感じてしまいます。 そして、あえて手間が掛かる施工を選択出来るのは、長年の経験と知識があって初めて可能な事なのだと思います。
御依頼主様の御質問に笑顔で丁寧に受け答えさながら作業される様子にも、川井さんの人柄が溢れていますね! |
|
|
取り付け施工が終わった新規のカギと補助錠。
真新しい真鍮製のドアノブと補助カギが光ってますが、経年変化によって周りと馴染んで良い風合いになる事でしょう。
この仕上がりの美しさには御依頼主様も本当に喜んでおられました。
最後の微調整に余念が無い川井さん。
そうそう、川井さんはネジの取り付けに電動ドライバーを使うことが全く無かったのですが、伺ってみると「手に伝わる感触でシッカリと締め付けた確認をする為」と、こんな部分にも拘りが伺えます。 |
|
|
カギ部分の取り付けが全て終了すると再度、ドアの建て付けを点検してから御依頼主様と一緒に作動確認をして此方でのカギの新設取り付け・修理を終了致しました。
京都は歴史の古い建築が多い都市です。 それゆえ経年劣化によるカギの故障は少なくないのでは?
しかし今回の住宅のように、古いカギの部品が揃わなくて修理不可能と思われると、多くの場合は全く別の新しいカギに代えられてしまったり、ドアの新設を提案されてしまうことだってあり得ます。
もしも今回のようなケースが身の回りで発生したら、そんな時は「使えるものは大事に再利用し、むやみやたらに大袈裟な施錠を取り付けない」・「景観美にも配慮した鍵の取り付け」と謂うポリシーを持ったカギの職人「ひかりロックサービス」の錠前技師・川井さんに御連絡される事を御薦め致します。 |
|