|
|
今回ご紹介するのは埼玉県和光市の大工、渡辺仁さん。御年72歳の大ベテランです。年齢を感じさせない元気さと明るさが特徴の大工さんです。
「俺のやることは遊びと同じ」と繰り返し話す渡辺さん。昔はよくスポーツやバイクの大会などを通じて遊んでいたようで、これらと同じく大工も遊びだと話していました。部屋を見て、考え、お客様の要望と同時に自分の味を出し、造りあげる。この工程を、自分にとって遊びだととらえているのでしょう。
しかし、遊びとは言っても大工はお仕事であり、この道のプロ。話を聞けば聞くほど渡辺さんの「空間」に吸い込まれました。 |
|
|
今回の取材現場は埼玉県川口市でした。渡辺さんは東京のほうで仕事をすることも多いようです。
今回は築40年のマンションで、1つはスケルトン状態、もう1つはフルリノベーションしたお部屋を取材しました。前者の部屋は床や天井の板はなく、全面コンクリートがむき出しの状態でした。作業中ということもあってたくさんの工具が置かれています。
渡辺さんはこの状態でありながら「もう完成図は見えている」とのことでした。もっと言えば解体前から完成図が見えるというから驚きです。
しかし、解体してわかったことがあるようで、それは「空間の無駄遣い」です。壁の妙な隙間のせいで使われていなかった空間があり、渡辺さんはその無駄をなくす工夫を施そうとしていました。 |
|
|
これはお風呂場の前で撮影した写真です。解体してからお風呂場を新しく入れたのですが、お風呂場の端と壁に少し隙間ができることが判明しました。ここで職人の腕の見せ所です
。 予定よりも隙間ができたので、壁にくぼみを作り、収納棚を作るというのです。これにより無駄な空間を埋めただけでなく、そのスペースを最大限に利用することができます。収納棚は移動式にする予定とのこと。移動式なので、住む人が棚を思いのままに使うことができますね。 |
|
|
こちらはタンスの写真です。狭いタンスは布団をしまうのにはもったいないと考えた渡辺さん。真ん中にあった棚を外し、一見、洗濯機を置くようなスペースができました。
しかし、ここは洗濯機を置くために設けたのではなく、洋服を掛けるために作ったスペースとのことでした。真ん中にあった棚を取り除いたことにより、コートなどの丈が長い洋服でも掛けられるように。また、洋服を掛けるだけにしては奥行きがあるということで、衣類掛けの奥に棚を設置するそうです。
ここにも職人の「空間の無駄遣い」をなくす技が出ています。 |
|
|
取材をしていると、いきなりコードを手に取る渡辺さん。「コードはすべて新しいものに変えています」とのこと。住む人の安全をよく考えた結果の行動です。築40年ということもあり、コードが傷んでいる可能性があります。
リフォーム毎に知り合いの大工に頼んではコードを変えていて、厳しい予算の中でも、なるべく変えるようにしているようです。これは1つのこだわりとのことでした。 |
|
|
続いて取材させて頂いたお部屋は、フルリノベーションしたお部屋です。スケルトン状態がこのようになると思うと、改めてすごいと感じました。その状態から1か月とちょっとで完成したと聞いて驚きました。しかし、いつもはもっと短い期間でできると聞いてさらに驚きです。
先ほどの部屋とは間取りが違う他、部屋の向きなども違います。そのため、先ほどの部屋にはない職人ならではの工夫が施されていました。まず、玄関に立つとすぐに感じるこの明るさです。窓まで一直線になっているので解放感があり、生活のしやすさが見て取れる設計となっていました。 |
|
|
このお部屋はマンションの端に位置していました。窓を見ると2重に。理由を尋ねると、端の部屋は外の気温の影響をもろに受けやすいため、壁に断熱材を入れたそうです。
これによりできた窓と壁の凹凸を、窓を2重にして埋めたとのことでした。しかし、理由は1つではないようです。窓を2重にすることにより、さらに断熱効果がアップします。
夏に涼しく、冬に温かい、を完璧に追い求めた形です。さらには、窓が2重のおかげで防音効果も期待できるとのことです。部屋の位置から断熱材を使うことにし、それによってできた凹凸を埋めるところから、たくさんの効果を持たせる技は、まさに職人ならではです。 |
|
|
タンスに目をやると一風変わった形の棚を発見しました。これは衣類を掛けるためのタンスなのですが、通常コートなどの丈の長いものは棚によってかけられません。しかし左側の空いたスペースがこの問題を解決してくれます。これはとても便利!と思わず声が出ました。
スペースを無駄なく使いこなす発想力が、渡辺さんにはあります。豊富な経験と引出しがある渡辺さんに、ぜひリフォームをお願いしてみてはいかがでしょうか。 |
|