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親子代々50年、大阪でタイル職人の仕事に携わるタイル屋・松村さんを御紹介いたします。
今回は大阪市東住吉区の松村さん御自宅が取材現場!
御自宅のリビング・キッチンリフォームに合わせて、キッチンまわりのタイル貼りを施されます。
先ずは施工前の写真から。
新しく備えられたシステムキッチンの壁に合板下地壁が作られ、その下地壁にタイル貼りを施していきます。
下写真はコンロまわりにタイル貼りが進められている様子です。 |
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お伺いした時点で随分と作業が進んでいますが、壁面一画を取材用に残していてくださったので、そこでタイル貼りの実践をお願いしました。 ※写真上は目地の施工が終わっていないので仕上がりの印象はまだまだ変化します。
先ずは壁面と貼り付けるタイルとの相性に合わせた専用ボンドを下地壁に塗布する作業から。
経験20年のタイル職人松村さんが、手早く均一にボンドを塗り広げていきます。
20年と云えば既に熟練の職人さんですが、タイル職人の世界ではいまだに若手と呼ばれてしまうそう! その事には驚きましたが、それはタイル職人が年齢層が高めの職人業界だからと云うのが一つの理由とも。 |
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ボンドを塗り終えてから、続いて貼り付けるタイルシートを加工開始。
タイルは一般的に紙シートに貼られた状態で職人さんの手に渡ります。
なので壁面の寸法・形に合わせた切削加工が必要になり、仕上がりを美しくみせる為にも割り付けを考えながら余分なタイルをカットしなければなりません。
今回選ばれた名古屋モザイクタイル工業のOAVONE(パヴォーネ)は、磁器タイルなので硬質な為、サンダーを使ったカット作業にも関わらず結構な時間手間が掛かる様子でした。
熟練のタイル職人でもカットの際に欠けや割れの注意、そして何よりも危険が伴うサンダーを用いる作業は細心の注意が必要とおっしゃいます。
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カット作業が終わると貼りつけ行程へ。
上写真は30×30センチにシート加工されたタイルの仮止めの様子。
シート一枚に数百枚の小さなタイルが糊着けされた状態から、それを割り付けカットして一枚一枚貼っていく作業です! ※これが簡単な事ではないのが作業が進むにつれ理解できました。
ある程度の位置決めが決まったらタイルたたき板を用いて、タイルを圧着していきます。 ※タイル圧着には素材や貼り付け箇所に合わせて、数種類の専用道具を用います。 |
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位置決めしながらの繊細なタイル貼りが続きます。
先に述べたように、予めシートに貼られたタイル一個一個の隙間間隔と、シート一枚単位でのタイル間の隙間を正確に合わせていかなければならないので、完全に密着させる前の仮止め作業中に大まかな位置決めを行います。
人間の手で行なうタイル貼りですからu単位の広範囲で、全て同じ精度に仕上げるのは不可能ですが、それでも松村さんは常に100%を目指して作業されているそうです。 ※でも松村さんは常に100%は実現不可能とおっしゃいます。当たり前です。100が99・98・97になっても100を目指す松村さんに共感致しました。
一枚のタイルシートを仮止めすると、正面・斜め・横方向と始点を変えながら、貼り付け位置にズレがないかを念入りに確認していきます。 |
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今回のキッチンタイル貼りの面積はおおよそで4㎥ の面積だそう。
この広い面積に細かなモザイクタイルを貼る作業は熟練のタイル職人でも難易度が高くなります。
例えば、正方形や長方形のタイルが縦・横に並んでいるので、些細なズレとは云えそれに気付かずタイル貼り作業を進めると、貼り終わりでは大きなズレになってしまうので、シート一枚一枚を正確に位置決めする必要があるのです。
そんな事も踏まえながら、壁への割り付け作業(始点と終点のバランス合わせ)は、頭の中で完成状態を頭の中で想像して「施工面積・壁面の形・シート寸法・デザイン」とを刷り合わせて行われます。
※松村さんは殆ど全てのタイルメーカー商品を取り扱って、お客様にはカタログ等を参考に自由に商品を選んで頂いてるとの事。 どんな物でも気に入ったタイルがあれば遠慮なく指定してくださいとおっしゃっていました。
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今日の難関はコンロの上に設置された換気扇口と壁の隙間へのタイル施工です。
30センチ角のタイルシートを7×30センチの極端な横長シートに分割し、後半部分(小さな写真参照)では更に小さな寸法をサンダーで割り付けカットします! ※写真で分かるとおり、カットした部分のタイルは数ミリ幅の小ささです!!
換気扇口周りのタイル貼り作業が終わり、此処までで本日予定していたタイル貼りの60%程度が終了しました。
余談ですが、松村さんはタイル張り替え後のアフターケア・メンテナンスも自らが行えるようにと、本格的なハウスクリーニングの知識・技術を得るために勉強を重ね、その技術は実際にクリーニングを請け負う程だそう。
タイル貼り、タイル張り替えは勿論、タイルのクリーニング・メンテナンスまで、タイルのトータルケアまでを担える凄腕タイル職人です。
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壁に貼り付けたタイルシートがある程度まで接着固着するのを待って、タイルシートのシート台紙を剥がす作業をします。
季節によって接着ボンドの乾燥時間が変わるので、カタログ上の目安時間で剥がしてしまわず、自ら触って指に伝わる感触でボンドの乾燥具合を確かめます。 ※此処での注意点としてはタイル(タイルシート)の生産国や生産ロット差で、シート台紙とタイルの接着に違いがあるそうで、剥がしやすいシートもあれば、タイルが張り付いてシートが剥がれ難い物もあるとか!
乾燥具合がОKとなれば、水をスポンジに含ませてシート全体を濡らしてから、シート糊に水分が滲みわたった所で、シートを丁寧に剥がしていきます。 |
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シートを剥がし終えた所で、タイル1コマ毎のズレ補正や、カット時にシートから剥がれ落ちてしまった細かなタイルパーツの補修を行います。
上の組写真は欠損タイルの補修ですが、指の爪よりも小さなタイルパーツを貼ってから、金属クシで位置調整をしています。
下写真は水平垂直の調整場面。 これは貼り付け作業中のズレと云うよりは、メーカー工場でタイルがシート台紙に貼り付けられた時に生じるズレを整える補正作業です。
ただし素人の私が見た限り、全く気付かない程度の微小なズレなので、松村さん自身も「省いても問題ないかも?」とおっしゃられていました。 しかし「気になったら放っておけないので」と、正に熟練タイル職人の仕事に対する真摯な姿勢を見た場面でした。
松村さんは大阪で親子二代、50年に亘ってタイル職人一筋で仕事に携わってこられ、現在は大手建築メーカーからの仕事依頼も数多く受注され、業界専門誌のタイル貼りコンテストで入賞されたり、重要文化財のタイル補修やタイル修繕、また芸能人の自宅のタイル張り替え工事なども手掛けられている実績があります。
それだけ多くの実績がある事からも、信頼のおけるタイル職人であるのが伺えるのでは?
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作業はいよいよタイル目地に目地材を塗り込む最終段階へ。
専用の目地材と水を溶き合わせ、ペースト状の目地材をゴムテと云う専用道具で目地に押し込みながら塗っていきます。
この時、目地に空気層が残ると、ひび割れや剥がれ落ち、カビ等の汚れを発生させる原因となるなだそう。
なので隙間を完全に無くす為に、かなりの力でグイグイ押し詰めて充填するイメージで目地塗り作業をしていくそうです。
ある程度塗り広げると、少し落ち着かせてから更に目地材を塗り重ねて強固な目地を作っていきます。
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このタイル貼りでは目地の深さは約7ミリ、目地幅約1.8ミリほど、小さなモザイクタイルの目地全てに目地材を塗るのも大変ですね!
白い目地材が塗られる事で壁面が一気に明るくなった印象に!
ちなみに目地材はタイル貼り用ボンドが完全に乾いてからでないと塗る事が出来ません。
取材二日前に予めタイル貼りをしてくださっていた部分があったおかげで、目地材塗りも拝見できましたが、もしそれが無かったら私は完成イメージの想像を間違っていたかも知れません。
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目地材が有る程度乾燥した後、水を含ませたスポンジで余分な目地材を拭い取ります。
と言っても、タイル表面の極薄い膜のような目地材を拭き取るイメージで、目地そのものに詰め込まれた目地材は極力拭き取ってしまわないように作業します。
なのでスポンジに含ませる水加減と、拭き取る際の力加減も職人技の一つで、最初の拭き取りから最後の拭き取りまで、一回一回の作業を手に伝わる感触でそれぞれの加減を調整するのだそうです。
前半の目地材が詰まってない写真では落ち着いた雰囲気でしたが、全ての作業が終わるとタイルの柔らかい色調と白い目地が合わさって、明るいモザイクタイルキッチンが出来上がりました。 |
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後日に完成のご連絡を頂き「ええ職人ドットコム」の別スタッフが撮影にお邪魔しました。 キッチンの壁をモザイクタイルで美しく仕上げられた様子がお分かり頂けると思います。
そして窓周りのタイル貼りも精密に仕上がっていますね。 今回のような細かなモザイクタイルを窓枠のような場所へタイル貼りするのは割り付けの手間が掛かり、タイル職人の腕の見せ所となるそうです。 しかし松村さんは今回のような難しい仕事程、どんどん任せてほしいとおっしゃいます。 修行時代の親方と、先代から【量をこなす職人ではなく、質を追求する職人】であるようにと、鍛えられた職人であり、既にタイル職人20年のベテランですが、まだまだ職人技の追求に余念がありません。
大阪市でタイル貼り替えはもちろん、タイルの部分修復やタイル目地のクリーニング等、タイルに関するあらゆるご相談は、タイル貼り50年の技術を受け継ぐ熟練職人の松村さんまで。
取材撮影;末光誠 |
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