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東京都調布市のフィルム・シート施工会社「株式会社SOUEI」さん。今回、拝見したのは、軽自動車にラッピングフィルムを貼る作業です。
作業スタッフは、代表取締役の三原さんと、津田さん、佐々木さんの3人。三原さん(中央)はこの道20年のベテラン職人です。
津田さん(右)は三原さんと知り合って4年。今や三原さんの片腕とも言える存在です。そして、佐々木さん(左)は入社したばかりの新人。三原さんや津田さんから仕事を学びながら作業をする、いわば修行中の身とのこと。
今回の現場は東京都品川区でしたが、都内だけでなく、依頼があれば遠方へも訪れるとのこと。屋内に作業スペースがあれば、作業は可能だそうです。 |
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ラッピングとは、車に接着剤のついたフィルム(シート)を貼ること。
塗装より安価に、かつ短時間で外装を変えられるので、主に企業が所有する車に社名や広告を貼るために行なわれますが、一般ユーザーがドレスアップ目的で施工することも。
貼り方はいろいろで、ボンネットやルーフなど車体一部の色を変えたり、車体全体をメーカーにないカラーにしてみたり。アニメのキャラクターをプリントしたフィルムを貼った、いわゆる「痛車」も、ラッピングによるものなんです。
なお、SOUEIでは、車のラッピング以外に、写真のような外壁・ガラス・扉などへのフィルム・シート貼りを請け負っているそうです。 |
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作業は朝9時にスタート。
まずはフィルム貼りの邪魔になるドアバイザー(サイドバイザー)を外します。
取り付け部分に残っている接着剤(接着テープ)も、スクレーパーで削るようにして取り除かなければなりません。
津田さんはアルコールで車体全体をクリーニング。ホコリや油分が残っているとシートが綺麗に貼れないので、細かいところまでウエスで拭き取ります。
慌てず、丁寧に作業する三原さんと津田さん。こんなところに、美しい仕上がりを求める職人ならではの仕事ぶりが見受けられます。 |
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三原さんが箱の中から取り出したのがラッピングフィルム。今回は、あらかじめマークがプリントされたフィルムを使用します。
これはフィルムのカラーや文字色を決め、車のサイズのサイズをもとにマークを配置して、関連業者に製作を依頼したものだそうです。
ラッピングフィルムは3M社の製品がポピュラーですが、そのなかでもさまざまなタイプがあります。
目的や予算に応じてフィルムを選ぶのも仕事のひとつ。経験豊富な三原さんにお任せすれば、適切なグレードのラッピングフィルムを選んでもらえますね。
ちなみに、今回使用しているラッピングフィルムは高級品とのこと。安価なものは剥がれやすいなど、耐久性が低いんだそうです。 |
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車の側面からラッピングフィルムを貼りはじめます。
まずはマークが正しい場所にくるよう、フィルムの位置決め。指先でフィルム越しにドアノブなどの位置を確かめ、マグネットで仮止めします。
ラッピングフィルム自体は、余裕をもったサイズですが、マークが入っているため、水平がきちんと取れていないと見た目が悪くなります。
三原さんは、要所で窓枠などからの寸法を測って、水平がとれていることを確認しています。 |
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いよいよラッピングの開始です。貼り方の流れは以下の通り。
まず、裏の台紙を剥がして接着面を車に貼り付けます。
空気が残らないように、ヘラを使って中心部から撫でるようにフィルムを押さえて密着させます。
1枚のフィルムで前後ドア全体をカバーするように貼り、余分をざっくりカット。片側15分未満の作業です。
一見、簡単そうな作業ですが、素人がやると空気が残ったり、シワが出たりと、綺麗に仕上げるのは難しいとのこと。
失敗したら剥がして、再度貼り付けることも可能ですが、一発で決めないと時間がかかるばかりか、素材によっては色ムラがでることもあります。
やはり専門の職人さんにお願いするのがベストですね! |
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続いてフィルムの縁の処理。
ドアの周囲や窓枠まわり、給油口カバー周囲などをカッターナイフで綺麗にカットします。
もちろん、それだけではフィルムの断面が見えてしまうので、指で押さえつけたり、カッターナイフの背を使って窓枠パッキンゴムの下に埋め込んだりして処理します。
ちなみに着用している手袋は「静電気拡散性手袋」と呼ばれるもの。フィルムに汚れが付くのを防ぐとともに、指でフィルムを押さえつける作業をしやすくしてくれます。
三原さん曰く、「これがあるとないとでは作業のしやすさに100倍差がある」んだとか。 |
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ドアノブまわりは、フィルムをカット。
指でボディの凹凸にフィルムをしっかり密着させ、カッターナイフで切り抜きます。このカット面も、断面が見えないようにヘラの角などでしっかりカーブ面に圧着。
ドアノブの下にフィルムを貼る際は、ヒーティングガン(ドライヤーのようなもの)で温め、きついカーブに追従しやすくします。
ヒーティングは、あまりやりすぎるとフィルムを傷めますし、温まったフィルムを伸ばし過ぎれば、あとで剥がれやすくなります。温める加減、伸ばす力の入れ具合など、経験を積んだベテラン職人でないと難しい作業だと言えます。
仕上がりを見てびっくり! まるで「最初からこの色」だったような仕上がりです。 |
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左右の前後ドアにフィルムを貼ったら、ボディ後部、ボンネット部分と貼り進めていきます。
一日で作業を完了させるため、佐々木さんを加えた3人でスピーディに作業を進めます。
三原さんは佐々木さんに自らの作業を見せ、ときに厳しく指導。佐々木さんがひとりで作業した部分も、最終チェックを行ない、必要なら手直しします。
お客さんは、どのスタッフが作業しようとも、仕上がりが悪ければ納得しません。経験の浅いスタッフが施工した部分の仕上がりを、三原さんがしっかりチェックすることで、クオリティの高さが維持できるんですね。 |
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次に取り組んだのはフロントグリル。
まず、津田さんがプライマーを要所に塗ります。
プライマーは接着性を高める下地剤で、ボディに塗ることはありませんが、この車のフロントグリルのような樹脂パーツには、塗らないとフィルムがしっかり密着しないのです。
プライマーを塗ったら、フィルムをカットしてフロントグリルの縦枠、横枠ひとつひとつに貼っていきます。
細かく、そして根気のいる作業ですが、むしろ楽しそうに行なう三原さん。
「子供がシールを貼るのの延長みたいなもん」と自らの仕事を評していた三原さんですが、根っからフィルム(シート)貼りの仕事が好きなんですね。 |
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フロントグリルまわりが仕上がったら、フロントバンパーへのフィルム貼りです。
サイドのきついアールにヒーティングしながら貼り付け、ヘッドライトとフロントグリル部分を切り抜いて、バンパー下部の処理をしたら完成。
バンパーとフロントグリルが同じカラーで統一され、まるで同じ素材でできているような錯覚を与えます。
このフレーズ、繰り返しになりますが「最初からこの色」だったような仕上がりですね! まさに職人の腕が発揮された「見せ場」と言えます。 |
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リアゲートと、その上にあるスポイラー、各所のピラーと、順調にフィルムを貼り、最後の作業はルーフ(屋根)。
ボディ面にゴミなどがないかチェックし、油分をアルコールで拭き取って、大きなフィルムを貼り付けます。
ワンボックス車のルーフは、強度を高めるために縦に山型が付けられているので、それに密着させるよう、指などで丁寧にフィルムを押さえつけていきます。
フロントガラス上部はアールがきつく、貼るのに苦労する場所。ヒーティングしながら、シワが出ないように貼り付けていきます。
目立つ場所だけに、丁寧な作業が求められます。 |
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朝9時から昼食を挟んで夕方5時過ぎ。フィルムを貼り終え、いよいよ作業も終盤です。
残るは、フィルムとともに製作を依頼したカッティングシート(マーキングフィルム)を貼る作業。
素人では、曲がったり、しっかり圧着できずに切れてしまったりと、きれいに仕上げるのが難しいカッティングシートですが、ベテランの「貼り屋」である三原さんにとっては簡単な作業。スピーディに仕上げます。
今回のように、車全体をひとつのカラーでラッピングすると、どうしても単調な印象になってしまいますが、要所にカッティングシートでデザイン処理を施すことで、ぐっと締まった感じになりましたね! |
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これで一日がかりの作業が終了! と思いきや、三原さんが「やっぱりサイドミラーにも貼りたいなあ」とひと言。
確かにフロントグリルにまでフィルムを貼るこだわりを見せているのに、サイドミラーがオリジナルのままというのは納得いかないかもしれませんね。
ということで、急遽、予定になかったサイドミラーへのフィルム貼りが始まります。
ここもアールがきつく、シワができやすい部分ですが、三原さんと津田さんは手早く作業し、ものの10分ほどで仕上げました。
最後に、作業開始時に取り外したドアバイザーを取り付け直し、これで本当に作業完了です! |
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仕上がりの写真を、オリジナル状態を比べてみてください。
これまで繰り返した「最初からこの色」だったかのような仕上がりというフレーズは、決して大げさではありません。
塗装するより素早く、安価で、剥がせば元通りになるカーラッピング。一般の方だけでなく、ひょっとしたらこの記事を読まれている他の職人さんたちにも検討してほしいですね!
自分で行なう人も増えてきているようですが、そう簡単にいかないのは、ここまで読んだ方なら理解していただけているはず。
きれいに仕上げたいなら、東京都調布市から遠方へも出張してくれる、シート・フィルム施工専業の株式会社SOUEIに、ぜひご相談ください。
取材撮影;加藤康一 |
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