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埼玉県新座市の「中嶋工務店」。代表の中嶋吾郎さんは、大工仕事ならなんでもこなすベテランですが、なかでも得意としているのが介護リフォーム関係です。「福祉住環境コーディネーター」の資格をお持ちで、リフォームに介護保険が適用されるために必要な設計図や見積もりなどをまとめ、補助制度申請の手続きも行なってくれます。 ここでご紹介するのは、さいたま市南区のYさん宅で行なった手すりの取り付け作業。ベランダへ出る2階の窓枠を見ると、すでに手すりが取り付けられ、踏み台が用意されていました。トイレや風呂場など、様々な場所に手すりを取り付けますが、本日の作業は階段手すりの取り付けです。 |
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古い手すりを取り外した壁に、手すりを固定するためのベースとなる板を貼ります。ベース材を仮止めし、階段の勾配と合っていることを確認して墨付け。左右の高さが同じになるよう、階段の踏面からの高さを正確に測ります。 踏面からの高さは、手すりの位置が施主の希望通りになるように決めますが、すんなりとはいきません。この現場では、右側の壁にある電灯のスイッチが邪魔になり、その下にベース材がくるように調整する必要がありました。梁などがあるため、壁は平坦ではありませんが、墨つぼを使って数回墨付けして、ベース材の位置が決まりました。 |
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墨線に合わせてベース材を貼ります。左側の壁は梁材が飛び出しているので、それに合わせてベース材をカット。長年使い慣れた矩尺で墨線を引き、丸ノコで手際よくカットします。 梁材の下にぴったり収まったら、ビスで壁に固定。強度を保つため、間柱にビス留めする必要があります。建築をよく知る中嶋さんは、大体の目安をつけたうえで、ゲンノウで軽く叩いたり、小径のドリルで実際に穴を開けたりして間柱の位置を確かめます。位置が分かったら壁に墨付けし、ベース材にまず下穴を開けてから、インパクトドライバーでビス止め。ベース材に使われているのはセンなどの堅木なので、なかなか力のいる作業です。 |
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梁材の上部には、壁から少し突き出すように、細い梁材がもう1本。ここは梁材のほうを削って対処します。ここは経験豊富な大工の腕の見せどころ。ノミ1本できれいに欠き込みを入れ、ベース材がきれいに収まるようになりました。 |
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欠き込みを入れたあとも難題が。壁の2階部分にあたるところが、5センチほど下がっています。中嶋さんは、ベース材の上端を固定する部分に木材をかませて、この問題をクリア。「こういうときに対処できるよう、いろいろ想定して持ってきているんだ」と、トラックから木材を引っ張り出し、丸ノコで大まかに幅を合わせてからカンナで仕上げます。 さすが大工歴50年。見事なカンナさばきで、同じような状態の右側の壁の分とあわせてふたつの木材をあっという間に作りました。 |
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左側の壁にベース材を貼る作業が終わったら、次は右側の壁。本来であれば、どちらか片方を、手すりを取り付けるところまで仕上げてから、もう一方の壁の作業に入るそうです。それは、施主の方が作業中に階段を利用するのを考えてのこと。手すりがない状態をできるだけ短時間にしようという中嶋さんの心遣いです。今回は、手すりの材が発注品と同じかどうかの確認に少し時間がかかったので、先に左右の壁のベース材を取り付けることになりました。現場の状況に合わせた臨機応変な判断は、経験豊富な大工だからこそ。 |
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いよいよ手すりの取り付けです。下端の受けになる金具(エンドブラケット)を仮止めし、上端の位置を決めたら、手すり材の長さを合わせます。つぎに、上端と下端の金具をビス止めし、間に入る3つの金具(受けブラケット)を固定します。 壁が平坦ではないため、受けブラケットを取り付ける位置に多少の制限はありますが、見た目に違和感がないよう、できるだけ均等な位置に取り付けます。 |
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右側の壁に貼ったベース材にも手すりを取り付け、作業は終了。手すり材は滑り止めの凹凸がつけられたタイプを使用していますが、指がうまく引っかかるよう、凹凸が壁側にくるように固定するのが基本です。 |
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最後にゴミを片付け、掃除機をかけて作業完了。施主のYさんに実際に階段を上り下りしてもらって、手すりの高さに不具合がないか確認してもらいます。Yさんは「ずいぶん立派な階段になったわね」と喜んでらっしゃいました。 作業開始から休憩を挟んでおよそ4時間。壁が平坦でなかったり、間柱の位置が分かりづらかったりと、決して簡単な現場ではないと思われましたが、中嶋さんは長年の経験で培った判断力と対応力で苦もなく工事を済ませました。介護リフォームは築年数の長い建物で行なうケースが多く、今回のような臨機応変の対応が求められることも多々あります。中嶋さんのような経験豊富な大工に依頼するのがオススメです!
取材撮影;加藤康一 |
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